延長記号とも呼ばれるフェルマータは、音符や休符の上下に書かれる半円と点の記号で、その音や休符を楽譜に書かれた長さより十分に長く伸ばして保つことを表します。どれだけ伸ばすかは曲想や響きに応じて演奏者が決め、元の長さの2倍前後を基準にするのが一般的です。十分に保ったあとはひと呼吸おいて元のテンポで次の音へ進みます。休符の上なら静寂の中で拍を止め、小節線の上ならフレーズの間に短い呼吸を置きます。
ひと目で わかる
- フェルマータの付いた音符や休符では拍の進行をいったん止め、その響きや静寂にとどまります。
- 伸ばす長さは演奏者の解釈に委ねられます。元の長さの2倍前後を目安に、減衰する響きを聴いて決めます。
- フェルマータの後は、新しい速度標語がない限り元のテンポに戻ります。
- Virtuはフェルマータでメトロノームごと演奏者を待ち、次の音を弾いた瞬間から再び拍を数え始めます。
- 1–4小節

フェルマータが 求める 音楽表現
どのくらい伸ばせばよいか
機械的に決まった拍数はありません。伝統的な演奏習慣では「元の長さの約2倍」がよく目安とされますが、実際の演奏では頭で拍を数えるよりも、空間に広がるピアノの残響に耳を傾けます。和音の響きが自然に減衰し、次のフレーズを待ち望む緊張感が満ちるまでとどまりましょう。上のショパンの譜例では、2小節目のフェルマータは静かな最初の問いかけが息をつく場所であり、4小節目のフェルマータは激しいAllegroの主部がなだれ込む直前の張り詰めた間を作っています。
伸ばした後はどのテンポで進むか
フェルマータはその一箇所の時間を引き延ばすだけで、曲全体のテンポを遅くする記号ではありません。響きを収めてひと呼吸おいたあとは、元のテンポで次の音を弾き始めます。上の譜例でも、2小節目のフェルマータに続く3小節目は元のLentoで進み、4小節目のフェルマータの直後にはAllegro con brioという新しい速度指定が書かれているため、そこから速い主部へ突入します。
フェルマータの音の下で他の声部が動くとき
4小節目を見ると、右手の最高音だけにフェルマータが付き、内声と左手は4拍目で和音を変えています。このように特定の声部だけにフェルマータがある場合は、動く声部を拍どおりに弾き終え、すべての音がそろって鳴る最後の拍からフェルマータとして伸ばします。Virtuの模範再生でも同じく、フェルマータの音が終わる前の最後の声部移動が完了した時点から長さを引き延ばします。
休符の上のフェルマータ
2小節目の左手の全休符のように、休符の上にフェルマータがあるときは音も拍の流れも一緒に止まります。鍵盤の上に手を構えたまま静寂の余韻を保ち、次の小節へ入ります。
小節線の上のフェルマータ
小節線や複縦線の上に置かれたフェルマータは、音を伸ばすのではなく、そこで音楽をいったん区切って短い呼吸を挟むことを意味します。また、バッハなどバロック期の楽譜では、反復やダ・カーポのあとに曲が最終的に終わるFineの位置を示す記号としても使われました。下のペツォールトのメヌエットがその典型例です。
ペツォールトの メヌエット終結部 :反復記号の 上の フェルマータ
ペツォールトのメヌエット ト長調 BWV Anh. 114では、最後の32小節目の反復記号の上下にフェルマータが記されています。音符ではなく反復記号の小節線に付いており、曲が最終的に終わる終止の位置を示しています。
- 反復前の1回目に到達したとき:長く伸ばしません。メヌエットの3拍子の流れを保ったまま軽く息を継ぎ、17小節目へ戻ります。
- 反復を終えて2回目に到達したとき:ここが曲の終わりです。最後の主和音を豊かに響かせて曲を閉じます。
- 28–32小節

ベートーヴェン 「月光」 第1楽章の 終わり :最後の 和音と アタッカ
ベートーヴェンの「月光」ソナタ Op. 27 No. 2の第1楽章は、ppで静かに消え入る最後の和音にフェルマータが付いています。右手の上と左手の下にそれぞれ記されており、両手で同じ和音を一緒に伸ばし、一緒に鍵盤から手を離します。
その複縦線の上には、ただちに次の楽章へ続けよという意味のAttacca subito il seguenteが記されています。通常、楽章末のフェルマータの後には次の楽章に入る前の長い休止を置きますが、attaccaはその逆を求めます。最後の和音を十分に響かせたあと、余韻が途切れないうちにすぐ第2楽章を弾き始めます。
- 67–69小節

フェルマータの 練習手順
- まずはフェルマータなしでイン・テンポで弾く最初はフェルマータを外し、楽譜に書かれた長さどおりに一定の拍で弾いて前後の流れを固めます。前後のテンポが安定してこそ、フェルマータで立ち止まる効果が際立ちます。
- 最初は2倍の長さで数え、慣れたら残響を聴く感覚をつかむまでは、フェルマータの音を元の拍数の2倍で数えて伸ばします。慣れてきたら数を数えるのをやめ、和音の響きが減衰していくのを耳で聴きながら長さを決めます。
- フェルマータと直後の再出発をつなげて練習するフェルマータの音からその後の2〜3拍までをひとまとまりにして何度も通します。音を保っている間に次の音の指を準備し、ひと呼吸おいて元のテンポで迷いなく入る練習です。
- 休符と反復記号上のフェルマータを弾き分ける休符上のフェルマータでは手を膝に下ろさず、鍵盤の上に構えたまま静寂を保ちます。反復記号上のフェルマータは1回目はそのままのテンポで通り抜け、最後の終止でだけ長くとどまります。
Virtuは フェルマータで 演奏者を 待ちます
Virtuの「楽譜を聴く」や模範演奏は、フェルマータを音楽的に伸ばして再生します。あなたが弾くときは、フェルマータをどれだけ長く保っても急かさずに待ち、次の音を弾いた瞬間から拍のカウントを再開します。
- 模範再生では、2拍未満の短い音は2倍+1拍、2拍以上の音と休符は2倍の長さに伸ばします。反復記号上のフェルマータは1回目は軽く区切って戻り、曲の最後で伸ばします。
- フェルマータの音は鍵盤を押さえている間ずっと緑色で表示されます。メトロノームをオンにしていてもフェルマータの間はクリックが止まり、再開した音に合わせて次の拍からクリックが続きます。
- rit.やaccel.の区間でもVirtuはあなたのテンポ変化に追従し、a tempoで再び元のテンポを待ち受けます。
混同しやすい 記号との 違い
フェルマータとテヌート
音符の上下に引く短い横線であるテヌートは、拍を止めずに「書かれた長さを十分に保って重みを与える」記号です。一方、フェルマータは拍の進行を止めて書かれた長さ以上に引き延ばします。
フェルマータとrit.・rall.・ritenuto
rit.やrall.は数拍〜数小節かけてだんだん遅くし、ritenutoはその箇所から即座に一段遅いテンポへ落とします。これらはいずれもa tempoが出るまで遅いテンポが続きますが、フェルマータはその一音や一休符だけにとどまり、次の音からはすぐに元のテンポへ戻ります。
逆向きのフェルマータ
「月光」ソナタ第1楽章の最後で左手の譜表の下に書かれているように、下声部や譜表の下側に配置するときは半円を逆向きに描きます。意味も弾き方もまったく同じです。
よく ある 質問
フェルマータは正確に何拍伸ばすという決まりがありますか?
決まった拍数はありません。元の長さの2倍前後がよく使われる目安ですが、曲のテンポや和音の響き、フレーズ上の役割によって長くも短くもなります。Virtuの模範再生では、短い音は2倍+1拍、2拍以上の音と休符は2倍の長さに伸ばして演奏します。
フェルマータの後は隙間を空けずにすぐ次の音を弾くのですか?
歌い手がひと息吸うくらいの自然な呼吸の間を置いてから、元のテンポで次の音に入ります。もし新しい速度標語が書かれていれば、そのテンポで入ります。休符や小節線上のフェルマータの後も、静かな余白を十分に取ってから弾き始めます。
練習中にフェルマータを長く伸ばすと、Virtuにタイミング遅れと判定されますか?
いいえ、フェルマータではVirtuが時計を止めてあなたを待ちます。フェルマータの次の音を弾いた時点から拍を数え直すため、響きを十分に聴いてから入り、再開した後の拍がそろっていれば正確に判定されます。